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夫婦円満の秘訣
いつもと変わらない日常。
佐藤久美子はいつもの様に夕食の支度をしながら、夫である大輔の帰りを待っていた。
結婚して30年。
子供には恵まれなかったが、夫婦二人で平穏な生活を送っていた。
火にかけた鍋の中身がコトコトと小さな音を立て、ふんわりと柔らかいシチューの香りが漂い出す。
鍋を見詰めながら久美子は数日前に見た光景を思い出し深い溜息を吐いた。
大輔が寒くなってきたからすき焼きが食べたいと言ったので、その材料を買いにいつものように買い物に出掛けた。
しかし、出掛けた先に思わぬ光景を目にする。
大輔と見知らぬ若い女性が腕を組んで歩いていた。
久美子は自分の目を疑うが、30年も一緒に生活をしていた夫の姿を間違える筈もなく二人の姿が視界から消えるまで茫然をその光景を見送った。
何事もなく平穏だった夫婦生活が突然足元から崩れ落ちた。
湯気が立つシチューを掻き混ぜながら、久美子はキッチンの引き出しへと視線を向ける。
引き出しの中には白紙の離婚届。
女性と腕を組んで歩いていた、それだけで騒ぎ過ぎかもしれないが結婚して30年、専業主婦として家で夫の帰りだけを待つ生活をしてきた久美子に取って夫の裏切りはどうしても許せなかった。
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