第3章 ラウル公爵

2/4
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
隣国との国境沿いで、交通の要所でもあるこの辺りを治めている公爵は、社交的で音楽や舞踏が大好きだった。 自身や家族の誕生日、その他にも祝事などには必ず楽器の奏者や歌い手、踊り手を呼んだ。 公爵自身も歌や舞踏のセンスはなかなかのもので、客人にしばしば披露しては拍手喝采を浴びていた。 ホロンが呼ばれたこの日は、公爵の結婚記念日だ。 公爵の館は、この辺りでは珍しく白い滑らかな石で出来ていた。ホールにはざっと20人ほどが集まっていた。 内輪の祝いという事で、そう大きな宴ではないのだが、ホロンの他にも、金属製の縦笛を吹く者、木をくり抜いた打楽器を軽快に打ち鳴らす者など、数名の奏者が並んでいた。 「どうも我が国ルスルスは芸術性が低いと思うのだ。 10年ほど前にスザールという国に行ったのだが、あそこはすごい。街じゅうに素敵な音楽やダンスが(あふ)れている。 私はこの国にももっと華やかで洗練された芸術を広めたいのだよ。」 公爵がそう言うと、招かれた客人達は 「ごもっとも」 「流石(さすが)(あか)抜けていらっしゃる」 などと口々に()めそやした。 公爵は満足そうな笑みを浮かべて、奏でられる音楽に聞き入っていた。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!