第3章 ラウル公爵

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ほとんど黒に近いダークブラウンの髪を、ワックスの様な物でなでつける様にまとめ、詰め襟の上着を着ている。 ルスルスでは余り見ない出で立ちだ。彫りの深い顔立ちと相まって、かなり目立つ。 もう中年に差し掛かろうかという年齢だが、身のこなしや立ち居振る舞いがきびきびとしていて、実際よりも若く見える。 そんな人物が治めているせいか、この地方はルスルスの中では、ちょっと派手で洒落た雰囲気を醸し出している。 芸術に秀でた者には税金を軽くするなどの制度も作られ、その為に音楽や絵画などに打ち込む者も多い。 ホロンもその制度に助けられている一人だった。 公爵はホロンのヒターラが気に入っていたのだ。 いよいよ、ホロンの演奏の番になった。 いつもの様にヒターラを抱え、いつもの様に弦に指を走らせる。 曲目も何もかも、いつもの様に…。だが… 「いつもより音が良いな…」 公爵はつぶやいた。 ホロンの演奏が終わると側に行って声を掛けた。 「味のある良い演奏だった。腕を上げたか?」 「いえ、僕の腕ではありません。ヒターラが良いのです。」 ホロンは正直に答え、ヒターラを公爵に見せた。
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