第3章 ラウル公爵

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「ふむ、美しいヒターラだな。どこで手に入れた?」 「これは、ある旅の方からお借りした物です。実は僕のヒターラは壊れてしまったのです…」 「あの馴染(なじ)みのヒターラが壊れてしまったとは残念だな。しかし、このヒターラは…」 公爵も、ヒターラに刻まれた名とスザール王家の紋章に気が付いた。 「ティコリ・スマ…。道理で音が良い訳だ。諸国に名の(とどろ)くスザールの名工だ。なかなか手に入る物ではない。こんなレア物を持っているとは…どんな人物だ?」 「実は僕も直接会ってはいないのです。友人が借りて来てくれたので…。明日、お返しに行く事になっています。」 公爵はこの超レアなヒターラの持ち主に興味を持った。 「私も御一緒しても良いかな?」 「公爵様が?! 」 「こんなに貴重なヒターラを、まったく面識のない君に(こころよ)く貸してくれるとは、どんな人物なのか会ってみたい。」 「…はい…」 公爵の申し出をホロンが断れるはずもない。 あくる日、公爵とホロン、シルクルは連れ立ってセレの居る宿に向かった。
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