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宿では、セレがまたまた温泉に入っていた。
「セレ様、いい加減にしないとふやけますよ。」
今日の監視はナーガだ。
「あの子狐のおかげで滞在が1日伸びたんだ。ふやけたって、元に戻るだけの時間はあるだろ。」
「…そういう問題ではありません。温まり過ぎると身体に…ん?セレ様?」
セレの身体が右に傾き、そのまま湯の中に沈んでしまった。
「わぁっ!言わんこっちゃない!」
ナーガは慌ててセレを湯から引き上げ、上着を掛けた。
「ルルグ!手伝ってくれ!」
ルルグを呼んで、2人でセレをズルズルと引きずって廊下を歩いた。
そこに、ホロンとシルクル、そして立派な身なりの紳士が来た。最悪のタイミングだ。
「あれ? セレだよね?」
シルクルが気付いた。
「セレって…もしかして…?」
ホロンが言った。
「うん。このヒターラの持ち主。」
シルクルが答えた。
紳士、つまり公爵は呆れ顔になった。
…芸術性のカケラも無いじゃないか…こんな奴がティコリ・スマのヒターラの持ち主とは…
公爵のそんな思考を感じ取り、ナーガは無愛想に言った。
「主人は湯あたりしただけです。直ぐに元に戻ります。」
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