27人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「本来は圧着したまま固定して2,3日置いておくんだが…」
セレには魔法というものがある。
大地の魔法で圧力を掛け、風の魔法で乾燥を早めた。
「もう大丈夫だろう。弾いてごらん。」
と、数分でホロンにヒターラを戻した。
ホロンは弦を弾いてみた。
最初はそおっと…そして段々強く…
「ビクともしません!音も元通りです! 良かった…。ありがとうございます!」
「うん、喜んでもらえれば私も嬉しい。では君のパートをやってみよう。」
まず、セレが楽譜通りに弾いてホロンに聴かせた。
すると
「分かりました。弾いてみます!」
すぐにリピートした。完璧だった。
ホロンは一度曲を聴いただけで覚えてしまうらしい。
ぎこちない所を何度か練習して
「さあ、合わせるよ。」
「はい!」
連弾が始まった。
セレとホロンのヒターラに、ピアリの鼻歌が混じり、公爵が手拍子を入れる。
窓から漏れる華やかな曲に、道行く人々は足を止めて聞き入った。
セレ達が演奏に夢中になっているうちに、小さな宿の前には人だかりができていた。
誰からともなく手拍子、掛け声がわき起こっていた。
最初のコメントを投稿しよう!