第5章 生きとし生ける音

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ラウル公爵が、ふと窓の外に目をやると大勢の人々が身体でリズムを取り、曲を楽しんでいるのが見えた。 「!」 公爵は驚いた。 セレとホロンが、シャラン、という感じの最後の音を響かせ、曲が終わった。 窓の外に集まった人々から歓声が上がった。 「いいぞー!」 「最高だー!」 セレとホロンは呆気に取られた。 「いつの間に…」 公爵は笑顔で大衆に話しかけた。 「音楽は好きかね?」 興奮した声で答えがいくつも返って来た。 「こういう曲だったら、いつでも聞きたいよ。」 「楽しいね!身も心も軽くなる。」 みんなで同時に喋るので聞き取りにくかったが、歓喜、熱、生命力が溢れているのは、はっきりと感じられた。 …音楽と人々の心がリンクして生み出される躍動感… …これだ…私が求めている芸術は… ラウル公爵の胸に新鮮な風が吹いた。
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