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「おモテになりますこと!」
ピアリは思い切りセレを突き飛ばした。
「わっ!」
セレは椅子からずり落ちてしまった。
「ははは…」
公爵は楽しそうに笑った。そしてセレにも酒を勧めた。
「ありがとうございます。」
セレは酒の相手をしたが、魔法使いは酔う事はない。
話をつまみに酒が進み、いつしか公爵は酔い潰れて眠ってしまった。
翌朝。
陽射しの眩しさで、公爵は目を覚ました。
ベッドの上に寝かされ、ちゃんと毛布が掛けられていた。
…が、部屋には誰も居なかった。
一瞬、『昨夜の事は夢だったのか?』とも思ったが、テーブルの上に例の写真を見つけた。
その傍らに美しい貝殻の様な物があった。片面は金色、もう片面は虹色。
手紙が添えられていた。
『大地の竜の鱗です。ホロンのヒターラに着けて下さい。楽しい時間をありがとうございました。』
「…粋な退場だね。」
公爵は写真と竜の鱗をしばらく眺めてから、上着のポケットに大切そうにしまった。
「セレ、か…本当に風の様な奴だなぁ。」
折しも、爽やかな秋の風が窓から吹き込み、公爵の髪を揺らした。
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