第5章 生きとし生ける音

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「おモテになりますこと!」 ピアリは思い切りセレを突き飛ばした。 「わっ!」 セレは椅子からずり落ちてしまった。 「ははは…」 公爵は楽しそうに笑った。そしてセレにも酒を勧めた。 「ありがとうございます。」 セレは酒の相手をしたが、魔法使いは酔う事はない。 話をつまみに酒が進み、いつしか公爵は酔い潰れて眠ってしまった。 翌朝。 陽射しの眩しさで、公爵は目を覚ました。 ベッドの上に寝かされ、ちゃんと毛布が掛けられていた。 …が、部屋には誰も居なかった。 一瞬、『昨夜の事は夢だったのか?』とも思ったが、テーブルの上に例の写真を見つけた。 その(かたわ)らに美しい貝殻の様な物があった。片面は金色、もう片面は虹色。 手紙が添えられていた。 『大地の竜の鱗です。ホロンのヒターラに着けて下さい。楽しい時間をありがとうございました。』 「…(いき)な退場だね。」 公爵は写真と竜の鱗をしばらく眺めてから、上着のポケットに大切そうにしまった。 「セレ、か…本当に風の様な奴だなぁ。」 折しも、爽やかな秋の風が窓から吹き込み、公爵の髪を揺らした。
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