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セレ達は宿場町ティネルを出る所だった。
セレの足首はすっかり治って、もう普通に歩いていた。
「ナーガ、随分おとなしかったな。何か企んでいたんじゃなかったのか?」
セレが言った。
「もういいんです。あの公爵にはセレ様の価値も魅力も分かったみたいですから。」
ナーガは満足そうに答えた。
「そうじゃなかったら、どうするつもりだったの?」
無邪気な笑顔でピアリがきいた。
ナーガのブルーグレイの瞳が氷の様な光を湛えた。
「まずは記憶を書き換えて、緑の瞳の少女に恋い焦がれて止まない男に仕立て上げようと思っていました。
そして決して手の届かぬ所に少女の幻を見せるのです。
魔法を使えぬ者にそれ位の事をするのは我々には容易い事ですから。
叶わぬ恋の炎に身を焦がし、苦しむ彼の目の前で…」
「もういい。」
ウンザリ顔でセレが止めた。
見るとピアリもルルグもドン引きしていた。
「お前、恐ろしい事を考える男だったのだな…」
「…恐ろしい? セレ様からそんな言葉が出るとは意外です。」
ナーガがそう言ったのを聞いて、ピアリはふと思った。
「セレが本気で怒ったら…どうなるの?」
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