第1章 泥棒狐

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セレの顔を湯から上げて、肩を揺さぶった。 少し離れた所で温まっていたルルグも、何事かと寄って来た。 「どうしたの?」 「セレ様が気を失っています!」 「えぇっ?」 2人でセレを抱えて湯から出した。 湯船の(ふち)の平らな岩の上にセレを横たえた。 その時ナーガは何者かの魔法を感じた。 「敵か?」 警戒していると、扉の外からピアリの声がした。 「セレ!泥棒よ! セレのヒターラを盗られたわ!」 「ヒターラ?!」 ナーガは思わず扉を開けてしまった。 「ひっ!」 ピアリは引き気味に声を上げて、一瞬は目を()らしたが、ナーガの腰にちゃんとタオルが巻かれている事に気がついた。 「なんだ…その格好なら大丈夫だわ。セレは?」 「それが…」 ナーガが振り返ると、やっとセレが意識を取り戻して起き上がったところだった。 「セレ様!大丈夫ですか?」 「うん…気持ち良すぎて意識をまともに保てないよ。昇天しそうだ。」 ほんわりした表情でセレは答えた。 「意識を失っちゃうほど気持ちいいって?…よく分からないけど、とにかくあなたのヒターラが盗まれたのよ!」 ピアリはセレの手を引っ張った。
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