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「おいっ、この格好のまま?!」
恥ずかしがる暇も無く、セレは半裸姿で廊下を走らされた。
客の少ない宿だったのが良かった。誰にも会わずに部屋に着けた。
「見て、セレ。」
ピアリはセレ達の部屋のドアを開けた。
「…荒らされた様子は無いな…」
荷物は最初に置いたままの状態だった。ヒターラだけが無くなっている。
ヒターラとはギターとリュートの中間のような楽器だ。
「ヒターラだけを狙ってたみたいだな。何者の仕業だろう?」
「金色の狐みたいな動物だったわ。」
数分前の事。窓が開いた音を聞いたピアリが様子を見に来て、一瞬だが犯人の姿を見たのだ。
「それって多分、外で見た魔獣です。」
ナーガがセレの衣服を持って来た。
「先ほど微かですが魔法を感じました。窓の一部を魔法で壊したんでしょう。」
「…錠前が綺麗に切断されている。風の魔法を使う奴だな。」
服を着ながら、セレは錠前を確かめた。
「セレ、そんなにノンビリしていて良いの? アスヴィル陛下から頂いた大切なヒターラよ。」
全く慌てる様子の無いセレに、ピアリは少し苛立った。
「あのヒターラには魔法をかけてあるんだ。そう簡単には盗ませないよ。」
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