ラブ・デザイン

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 十七時三十分。休日明けの月曜日はどうしても仕事が増えるので少し残業になってしまったが、これくらいなら早い方だ。 (一日終わったー! お疲れ様、私)  周りを見渡せば残っているのは男性セールスがほとんどで、私みたいな内勤は皆もう帰ってしまっている。働き方改革で残業がし辛くなっているのだ。  パソコンをシャットダウンしようと立ち上げたシステムを次々に落としたところで、課長から「ちょっと、城ノ内さん」と声を掛けられた。 「はい?」 「申し訳ないんだけど、資料直すの手伝って貰えるかな」 「え?」  課長は顔の前で両手を合わせる。 「明日の会議で使うパワポ、さっきチェックしてたらプロジェクトの担当者名が間違っててさ。俺、パワポ苦手だろ? 弱っちゃって」 (苦手だろって自慢げに言うこと? 勉強もしてないくせに)  私は半眼になって課長の顔を見た。 「それって今から……ってことですよね?」 「そう。印刷したのも差し替えなきゃだし。なあ、頼むよ」 (印刷もあるの。サイアク) 「分かりました」 「助かるよ! 資料の保存場所は営業フォルダの中の……」 (課長が率先して部下に時間外労働させるってどうなのよ)  心の中で嘆息して、落としたシステムを順番に立ち上げ直した。
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