ラブ・デザイン

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「真嶋君帰れるんでしょ? 勤怠も締めたんでしょ? 何もここで残業なんてしなくても良いじゃない」 「デザインの人間はね、思いついたところで仕事をするの。良いアイデアは逃したくないしね」  お得意のウインクで返される。 (それはそうだけど、他の席で仕事をしてる人なんて見たことないわ) 「だったらデザイン室(じぶんのところ)でやれば良いじゃない」  真嶋君はタブレットを置いてへの字口を作った。 「僕がいると邪魔?」 「邪魔って訳じゃあ……」 「じゃあ良いよね」  被せ気味な強引さで了承と解釈し、にっこりと笑顔を作った。私は正面に向き直って嘆息する。 (物腰は柔らかいくせに強引なところがあるのよね) 「……負けたわ」 「え? 何か言った?」 「独り言」  真嶋君はそう、と呟いて本当に仕事を始めてしまった。うーん。本当に変な人。
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