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シュー、ガチャ。
複合機が動きを止める。私は印刷の終わった資料を全て揃え席に戻った。
「おお。お疲れさん。悪いな、城ノ内さん」
課長が顔を上げて手刀を切る。煙の臭いがぷんと漂った。
「念のため確認をお願いします。データは同じフォルダの中に今日の日付で保存しておきました」
書類を受け取った課長はろくに確認もせず、「サンキューサンキュー、助かったよ」とそのまま机の引き出しに仕舞う。
(こういう対応されるとわざと間違えてやりたいとか思っちゃうわよね)
ブラック思考のまま席に座って、今度こそパソコンをシャットダウンした。真嶋君も隣で鞄にタブレットを仕舞いだしている。課長は禿頭を撫でながら口を開いた。
「真嶋。お前も帰るなら一緒にどうだ?」
右手でおちょこを呷るジェスチャーに、真嶋君はふふと笑う。
「すみません。用事がありますので」
(なんだ。時間潰しだったのね)
残念だと返す課長を置いて、二人して立ち上がった。
「「お疲れ様でした」」
偶然声が揃ってしまい、視線を合わせて肩を竦める。彼の細い瞳が緩やかな弧を描いた。
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