第一章 彼方の国

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「今の女も軍人か? 少尉といえば偉いんだろ。それなのに……」 食事を終えて手錠を外された拓がキョウコに尋ねた。 「もちろん偉いよ。でもアタシのほうがちょっと偉いんだ。アタシは先任軍曹だからね。この基地では軍歴が長いんだアタシ。もう十年以上軍人やってるからね、主に整備兵だけど」 自慢げに言うキョウコは大きくもない胸を張ったが、体全体が小さいのであまり偉そうに見えなかった。 「レーズ・ミカ少尉は新人の突騎兵だよ。KR2ってマシンに乗ってる。アタシが整備してるし、レーズよりアタシが偉いんだ」 しきりに自分の偉さを強調するキョウコにあきれ、拓は苦笑した。 「今ね、タクのマシンを修理してる。整備チームが全力でね。修理が終わったらタクは突騎兵に志願するんだよ。じゃなきゃ死刑だよ」 苦笑したタクをにらみながらキョウコは言った。
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