第一章 彼方の国

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「わかったわかった。志願するよ俺。他に方法がなさそうだからね」 拓がそう言うとキョウコの機嫌が少し直った。 「じゃあさ、マシンの修理で何かリクエストある? もっとパワーを上げろとか、なんでも言ってね」 きらきらと輝く目で迫るキョウコに気おされ、拓は思わず言った。 「塗装を元に戻してくれ。青のロスマンズカラーに。あの塗装が大好きだったんだ俺は」 拓の瞳からこぼれた涙を見てキョウコは驚いた。 「ごめん。なにか資料がないと難しい塗装は無理だよ。タクのマシンは半分壊れて塗装もほとんど剥げ落ちちゃってるからね。青と白の塗装だったってことしかわからないんだ。でも安心して。アタシの大好きなピンクに塗りなおす予定だから。可愛いよ」 真顔で微笑むキョウコの宣言に拓は肩を落とした。
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