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「……キョウコ。ひとつ教えてくれ。キョウコはここの生まれか?」
部屋に戻った拓はキョウコに尋ねた。
「そうだよ。そんなこと聞いてどうするの? もしかしてアタシに興味津々
とか? まあそうだよね。ひとつ屋根の下で暮らしてるもんね。ずっと二人
きりだしね。そうかあ。アタシに恋しちゃったかあ。やっぱりね。わかって
たけどアタシ可愛いもんね。しょうがないよね」
早口でしゃべりながらそわそわしているキョウコの笑顔を拓は見つめた。
「えっと、それでなんだっけ?」
「キョウコはこのサウスって国の生まれなのか? そこが気になるんだ」
「そうだって。でも自分が生まれたときの記憶なんてないよ。気がついたら
この基地で機械をいじってたって感じだなあ」
「……じゃあ両親もこの基地にいるのか?」
「そういうのはいないよ。アタシはずっと一人で仕事してるんだ」
キョウコの返答を聞いて拓は思わず聞いた。
「キョウコも日本から来たんじゃないか? 俺にはそんな気がする」
「……だったらいいね。それでアタシたち、仲良しなのかもね」
キョウコは部屋の小さな窓から外の草原を眺めた。
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