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間もなく十九の誕生日を迎える富野拓は人生最後と決めたレースに臨み、愛車NS7のスロットルを限界まで回した。2ストロークエンジンの振動を全身に感じながらスタートを迎えた拓は、他のバイクに少し遅れたスタートを切った。ホームストレートで最高速に達し、いかに減速を抑えて第1コーナーを駆け抜けるか。拓の神経はその一点に集中された。スロットルを緩め、クラッチをわずかにつなげてニーブレーキでハングオン。先行するマシンのインを突いて先頭に躍り出る。そう計算した瞬間に前方で大量クラッシュが起きた。避けきれない。必死に交わそうとしたが、拓の全身を強い衝撃が襲った。死んだな。そう思ったところで拓の意識は途切れた。
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