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「おい小僧。そろそろ起きろ。手術は終わったぞ」
うす暗い部屋で拓が目を覚ますと、目の前に白衣姿の男がいた。見るからに初老の男は眼鏡をかけた顔でにいっと笑った。
「よく生きてたもんじゃ。いろんな破片が頭から顔から喉にまで刺さっとったから抜くのも大変じゃったわい。ついでに肋骨にはヒビが入っとった。それから左肩の腱が切れてるからな。当分は安静にしとれよ」
男はそう言ってベッドの上の拓に薄い毛布をかけた。
「ワシは軍医をやっとるトダじゃ。お前さんはタクといったな。名前からしてサウスの人間じゃないんだろう。どこから飛んできたんじゃ?」
拓が何かを言おうとすると、トダはさえぎった。
「お前は日本から来たんじゃろう。ワシもそうじゃ。ずいぶん昔の話だがのう。ちょうどお前くらいの年齢だったんじゃ。ここ草原の大陸イデアに飛ばされたのはなあ」
遠い目をしながら語るトダの言葉を拓は黙って聞いた。
「お前さんはRBに乗っていたようじゃな。間もなく軍のお偉いさんが詰問に来るじゃろう。正直に覚えていることを話したほうがええぞ」
そう告げてトダは部屋から出て行った。
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