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「隆司、MS3を押さえていたのは私なの。
あなたに頼まれていた分譲十軒分よ。佐川さんに
譲る?その代わりに今、ワンランク上のMG3を
押さえたわ。予定より価格が上がってしまうけど」
一旦通話を切った隆司に、今の結果を伝える。
私にできるのはここまでだ。後は隆司の判断次第。
「そうか、MS3は文香だったか。俺の方は
工務店となんとか話をつける。それでいこう」
「OK、じゃあ正式に発注掛けるわよ」
「ああ、頼む」
このやり取りを聞いていた皆が、一斉に
安堵の息を吐いた。
その中で一人、呆然としている佐川さんに
私は歩み寄った。
「御手洗さんに感謝するのね。もうこんな幸運は
無いわよ」
唇を噛む佐川さんに告げて、私はまた受話器を
取り上げた。
「あの、高橋さん」
「何?」
「ありがとう、ございました」
佐川さんが小さな声で感謝を示す。
そんな彼女に微笑んで、私は倉庫の短縮
ボタンを押した。
「ああ疲れた。今日は早く帰れる
はずだったのに」
「今日は文香のファインプレーだったな」
全ての騒動が一段落して、私と隆司は休憩室の
ベンチで一息入れていた。
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