273人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
長かった正月休みも遠い日の出来事のように
感じられるようになり、休み明けのどこか
のんびりした空気も去って、部署内にほどよい
緊張感が戻ってきた一月の中旬。
ようやく仕事がはかどるようになった。
なんて、思っていたというのに───
月末には部署内に、今度は浮ついた
空気が漂うようになった気がした。
けれども単に「気がした」程度だったので、
深く考えることなく月末の週を過ごして、
二月も二週目に入った今日、その理由を
知ることになったのだ。
***
「野間ちゃん、この席良い?」
「あ、文香さん、お疲れ様です。これから
お昼ですか?ずいぶん遅いんですね」
「そうなのよ。電話が長引いちゃって」
そう言って、後輩に苦笑を向ける。
昼休み前に在庫のことで担当者に掛けた
電話が思いのほか長引いて、昼休みまで
ずれ込んでしまったのだ。
でもそのおかげで、いつもは混雑している
社員食堂もずいぶん人が減っていて、普段は
空席を見つけるのに苦労するのに、今日は
すぐに席を見つけることができた。
それも、仲の良い後輩の隣に。
だから遅くなったことも、それほど悪くは
なかったと思える。
最初のコメントを投稿しよう!