エピソードタイトル未定

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 ベータの時は潤滑剤を必要としていたところがどくどくと脈打ち、とろりとろりと粘液を出してくる。  こんなの流れ出てくるのはもしかしたら蜂谷が注ぎ込んだ精液なのかもしれない。  この一晩でさんざん中に出された。  それなのに、まだ欲しいと身体が訴えていて、もう疲れ果てているのに続きを求めている。 「なあ・・・はちや・・・」 「かおる」  かりっと歯をたてられて、びくんと、操り人形のようにはねた。 「いいから・・・そこ、もういいから・・・」 「んー」  わざと無視する男が本当に憎らしい。  わかっているくせに、言わせようとしている。 「いいから・・・。挿れろよ、薫」  そのずるさも、些細な駆け引きも。  すべて、この身体の中に注ぎ込んで。 「早く、薫」  自ら足を大きく開き腰をゆらめかせながら、誘う。 「・・・どこで、そんなの覚えたの」  どこか、すねた声。  笑ってしまう。 「何言ってる・・・」  とろとろにとけた後孔を固くとがりきった蜂谷の亀頭に何度も何度も擦り付けた。 「いまに、きまってるだろ」 「――――――っ!」  ごくり、と蜂谷が唾を飲み込んだ。  そして、いきなり侵入される。 「ん、あああ・・・っ」  くぷりと張った部分が入り、迷いなく奥を目指された。  がくがくと、下から突き上げられる。  瑛の中で、蜂谷が暴れている。  でも、それは瑛も同じだ。  かき回されてますます潤み、突き上げられて明け渡し、離されると追いかけて、彼を離すまいと強く絞り上げる。 「・・・くっ」  蜂谷が、めちゃくちゃ感じているのがわかる。  すごくうれしい。  蜂谷が感じて、自分が感じて。  感じさせて。  もっともっとと、求める。  これは自分たちのバース性のせいなのか、それとも心が貪欲になったのか。  わからないけれど、それはこれから知ればいい。  ただ今は。  感じるだけでいい。 「なあ、出せよ」  喘ぎすぎてすっかりかすれた声でねだる。 「たくさん」  果てのない欲の凄さを初めて味わう。 「まったく・・・」  荒い息の中、汗だくの蜂谷が笑う。 「瑛!」  ひときわ強く突き上げられ、熱いものが奥の奥に放たれた。 「ああ・・・ああ・・・ああ・・・」  気持ちいい。  すごくいい。  気持ちよすぎてがくがくと震える自分を、蜂谷が抱き留めた。  二人の匂いが混ざり合い、巣を作る。 「か・・・おる」  こんなに自分が欲張りだなんて、知らなかった。  でもそれは。 「えい・・・」    お望み通りに。  それが、俺の望みだから。  と、言われた気がした。 「あの、ベッドルームにあった監視カメラはどうなったんですか」  ふと、思い出したので聞いてみた。 「あれ?気付いていたの?」  宮坂がきょとんと目を丸くする。 「はい。最初はわからなかったんだけど、途中で。ホテルに運び込まれた時に男たちがあらかじめ設置したみたいで」 「ああ・・・。そっち」  物憂げにため息をつかれて、首をかしげた。 「あれはね。怒りの女神と化した瑛がね。完璧すぎるくらい破壊しまくったから大丈夫。正直、あいつらのやったことの証拠として欲しかったんだけど、まあ、瑛も嫌だろうから」  事件にかかわったすべての人を聴取して、関係先も査察が入ったという。  怪我を負った人は厳重な監視下のもと、治療をすすめていて、瑛の母の回復も順調だとか。  時間の流れとともに、色々な真実が明るみになっていくが、解決もされている。  アメリカで起きたオメガへのテロ行為も、大河を日本へ誘い出した手筈も全て掌握済みらしい。  アルファの恩恵にあずかれずに道を誤った者、生物兵器としてバース特性に興味がある者たちが次々と捕縛された。 「あのね。そもそも通信回線からデータを破壊する能力って、もはやアベンジャーズだよ。俺や美津を越えてるね」  そんなことを言われても、覚えていないから答えようもない。 「ま、色々なことはおいおいにね」  そして、優しく頭を撫でられた。 「あらためておかえり、瑛。元気になって僕は嬉しいよ」 「・・・ありがとうございます」  騒動から五日後の月曜日。  ようやく出勤できた。  何もかも丸投げなのは人としてどうかと思ったのだけど衝動がどうにも止まらず、出かけようと試みては挫折してを繰り返し、やっと落ち着いた今朝だった。  初めてはそんなもんだよ、と宮坂と浅利が笑い飛ばしてくれたが、何もかもお見通しなだけにいたたまれない。  そもそも、何日も欠勤した。  仕事は同僚たちにカバーしてくれたおかげで支障を出さずに済み、正気に戻ったこの朝から頭を下げて回ったが、皆、まあ初めてだから仕方ないよなと、ぬるい笑みを返してきた。
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