花一匁

3/9
前へ
/13ページ
次へ
石段を踏みしめながら考える。 今まで山神様が生贄を欲しがるなんて聞いたことがない。 僕が村のこととか山神様に疎いだけかもしれないけど…。 結構石段が続くな…。 少し汗ばんできて、初めて着せられた白い上等の着物が肌に貼り付く感じがして気持ち悪い。 足が裸足でそこだけは風通しがいいけど。 石段を上り切ると、広い境内に出た。 境内って確かお参りする所じゃなかったかな? 何もないけど…ここでお参りするの? ここって真ん中の地面の周りに赤い花がいっぱい咲いている…彼岸花かなぁ? う~ん、彼岸花ってこんなこんもりしてたかな? 花を踏み潰さないように、花が咲いていない真ん中の地面に立った瞬間、"それ"から目を離せない。 目が血のように赤い巨大な獣。 身体は猪なのに頭は狼で長い長い尻尾は大蛇だ! 怖くて一目散に鳥居があった石段に向かって駆け出した! 声なんか出なかった。 逃げなきゃ殺されるから、とにかく走らないと! 鳥居まで着いた時に、石段に行くことができない! 全部見えない壁みたいな何かに阻まれて逃げられない…! 目の前が真っ暗になって、それからすぐに真っ赤に変わって、僕は何も分からなくなった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加