花一匁

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「キミが僕の代わりに生贄になってしまったんだね…かわいそうに」 身体が動かない暗闇で、不意に聞こえてきた優しい声。 今までのどんな人よりも優しい声だと思った。 「山神に身体ごと喰らい尽くされて、本当につらかっただろう。僕が助けてあげる。キミはまだ消えるべきじゃない」 必死になって声の主の姿を見たいと思うと重たくて動かなかった瞼が開いた。 僕は死んでない…? 「おや、気が付いたみたいだね。まだ身体は動かないだろうけど、話はできそうかな?」 「こ…こは…?」 「話はできるね。ここは神社の拝殿だよ。みんなが参拝する所なんだよ。ちょっと普通の神社より奥まった場所にあるから、あんまり参拝客なんてこないけどね♪」 「あんたは…神社の人…?」 「神職には就いていないよ。ずっと前から本殿に住んでいて、最近は神社の中なら歩き回ることができるんだ」 「よく分からないよ…」 「僕は病気で、あんまり身体が丈夫じゃないんだ。この神社は僕の親族が買い取って、代々神職に就いていて、僕の面倒も見てくれる。前はそれが鬱陶しくて嫌いだったけど、今は不自由しないからまあまあ快適かな」 「ふーん…」
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