花一匁

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「……オレは死んだのか?今も死んでる?」 ハッキリ言ってほしくて、自分から尋ねる。 自分のことを"オレ"と言うことが当然かのように、口から滑り出した。 「残酷だけど、山神に襲われた時点で死んでいる。魂は僕が持っている。蓮香が魂を喰われて消えるのは偲びない。僕の代わりに山神の生贄になってしまうなんて…」 「やっぱり死んだのか…。っていうか、何で菊水の代わりに山神様の生贄になったんだ?」 「僕が病気で、あの広場まで行けなかったから。数日前に山神はこの神域、つまり神社の広場にはいたんだけど、僕が動けないから、楼門を閉めて僕がいる本殿には入らせないようにしたんだ、僕が」 「動けないのに?」 「昔ちょっとだけ、まじないを習ったことがあって、楼門を閉めるくらいはできるんだ。後は神域に弱いけど結界を張って、山神を人里に行かせないようにしていたんだけど、里の人間には伝わらなかったみたいだね…」 仕方ないなという顔をして笑う菊水が、不意に消えてしまいそうな気がして、突き動かされるようにして彼に抱き付いた。 身体が自然に痛みも何もなく動いていた。 「蓮香…?」 「オレが菊水と一緒にいる」
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