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まさかニセモノか?いや、爪先ではまだ解らない。指先で触れてみるか?冷たい汗が後頭部でジワリと落ちた感覚。焦っているのか俺は、それはそうか、なにせ俺の生死がかかっている可能性がーー
「ただいま~」
そこで母親が帰ってきたらしい。玄関から直結するリビングでチョコ(らしく見えるソレ)の目の前で正座の俺。母親はそんな俺を見るなり「なにしてんの」と言う。
「チョコだよ、チョコ」と俺はドヤって告げてやった。
「まさか食べるの?」
「……食べたい」
「誰から?」
「舞」
「えっ?!え~~~舞ちゃん?!うっそ?!告白されたの?!」
「されてない」
「えええ?!じゃああんたが告白したの!?」
「してない」
「ええ~~~!ちょっとなにそれ~!告白しなさいよ~~~!!」
相手が舞と知って母親は大騒ぎだ。今までも何度か『あんた舞ちゃんはダメなの?』なんてオススメされた事がある。『お母さん舞ちゃんだと嬉しいなぁ~』なんて言ってたから何も問題はないだろう。
しかし今の俺にとってはそれよりもこの、茶色い物体を食べるかどうかにかかっている。
震える手のまま、ソレを掴もうとする。母親はピタリと動きを止めて「大丈夫ぅ?」と俺へ投げかける。
「これやっぱりチョコかな」
「チョコじゃない?だってバレンタインデーだし」
「俺がチョコアレルギーだって舞は知ってるよな?」
「知ってると思うけどねぇ」
「このチョコは、まさか俺を殺すために?」
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