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そこは切り立った岩山の頂でした。風でねじ曲げられたのであろう太い松が一本生えているきりで、他に生きているものは何一つありません。
四方は恐ろしく深い谷に囲まれていて、よほど高いのでしょう、厳しい風が絶えまなく吹きつけていました。
谷を隔てた向こう側に見えるタトラの山々は、ところどころ雲に覆われています。
「さて、まず初めに言っておくが、たとえお前が仙術を身に着けたとしても、その術を自分の欲望を満たすために使うことはできぬぞ。たとえ自分の命を守るためであろうとだ。同じように、親兄弟、血のつながったものの利益のためにも使うことは許されない。それをしたら、オレはお前を殺さねばならぬ」
ラータンはそう言うと、ぎろっとヴィヨセラスをにらみました。
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