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当時のクラクフと言えば欧州でも一二を争う大都市で、東西南北の国々を結ぶ重要な中継地であるだけでなく、商業地としても大変に栄えていました。 北のバルト海からは琥珀が、南のボヘミアからはガラス製品が、東のスラブからは織物が、タトラの山々からは猟師たちの仕留めた獣の毛皮などが流れ込み、さらにそれらの品々を求めて西のフランクは言うまでもなく、欧州中から大勢の商人たちが押し寄せていました。 商人がたくさんやって来るとなれば宿もレストランも毎日大盛況、それに伴い様々な商売が必要とされましたから、近いところからはもちろん遠いところからも、来る日も来る日もひっきりなしに新しい人たちがそれぞれの野望を抱えて、このクラクフの街にやって来るのでした。 丘の上にそびえるヴァヴェルのお城は、きらきらと陽光を浴びながらそんな街の賑わいを見降ろしていました。
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