バレンタインデーの次の日

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バレンタインデー翌日の朝冷蔵庫を開けると、箱で埋め尽くされていた。 今年も兄が大量にもらってきたようだ。例年通り。 少年野球をやっていた兄はいわゆる「エースで四番」だった。 高校では甲子園にこそ出られなかったものの、大学にはスポーツ推薦で入学した。 高校生の頃から兄のファンは結構いて、クラスメイトやマネージャーはもちろん他校の生徒からももらうことがあったらしい。 兄は甘いものがそんなに好きではないので、それを消費するのは専ら私と母だった。 兄が大学生になって、もらってくるチョコレートの中には高級なものがちらほらある。 いつも汗くさくて嫌だけど、この時期だけはほくほくだった。 早速、ひとつの箱を開けてみる。あれ?黒いシャツが入ってる……広げてみると、野球のアンダーシャツだった。 冷蔵庫の中を見てみると、アンダーシャツの箱と同じ箱が4箱。 え?これってまさか全部アンダーシャツ?開けてみると案の定そうだった。嘘……小さめの箱の方を開けてみる。 こちらはソックス。えー!なんで? 今年はチョコないの? 今日は土曜日。兄はもう練習に行っていていなかった。 庭で花の手入れをしている母に言いに行った。 「おかーさん!冷蔵庫にチョコが入ってない!」 「えぇ~?箱、いっぱいあったでしょう?」 「全部アンダーシャツと靴下だったよー」 「あら?じゃあプレゼントの方を入れちゃったのね。」 「チョコもらったの?」 「キッチンに紙袋ない?きっとそっちがお菓子だったんだわ。」 キッチンに戻る。 あったー!20個は入ってる。 お菓子はこんなに可愛いらしい箱なのに、どうして間違うんだろ。 そんな疑問はカラフルな箱を前にしたらどうでもよくなった。 ひとつひとつじっくり見たいけど、バイトに行かなきゃ。 アンダーシャツと靴下の箱を出して、冷蔵庫に入れた。あ~、食べるの楽しみだなー。 食べた後は、お返しを考えるのが私の役目。 アンダーシャツとソックスのお返しは分からないけど、本命チョコっぽくて誰からもらったものか分かるものにはちゃんとお返しを渡してもらう。 やっぱりファンは大事にしないとね。
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