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「…………ツカサくーん……やっぱ好きだぁ……」
「なんだかよく解らんけど抱き着くのやめて」
このオッサンの泣きどころが未だによくわからん。
俺の立派な思考に感動したって事なんだろうか。そういう事にしとこう。
「よし、ツカサ君にこれだけ期待して貰ってるんだから、僕もバンバン教えちゃうよ! じゃあ早速木の曜術の初級から始めようか!」
なんだこいつ、いきなり元気になりやがって。
訳が分からなくてイラッとしたけど、コーチしてくれるのはありがたいのだ。我慢して説明を拝聴しよう。俺はこれから忍耐も学ぼう。
「で、まずは何をすればいいんだ?」
「そうだね……超初歩であるグロウはもう使えるんだから、今度は攻撃系を覚えてみようか」
そう言ってブラックが説明してくれた術は、木の曜術の中でも実践に使えると言う【メッサー・ブラット】と言うもの。一言で説明するなら葉っぱカッターだ。
初級術【グロウ】で手の中の植物を硬化させ尖鋭にし、風の術で対象に突き刺してダメージを与える術で、使いこなせばミニ台風巻き起こしながら無数の葉っぱカッターを出す事が出来る。忍術か。忍術なのか。
木の曜術師は基本的に直接攻撃する術が少ない、言ってみれば後衛型の術師なので、このメッサー・ブラットも初級術とは言え中級に届く程度の難しさだ。んなもんを俺にいきなりやれっていうんだから、ブラックもわりとスパルタだよな。
でもやらないとしゃーない。文句を言う前に実践だ。
とりあえず、やった事のなかった風の術から練習してみる事にした。
……何気に【気】を使った術って初めてだな。
「それじゃ、まずは【フロート】……物体を浮かせてみようか。この小石を立った自分の目線まで引き上げる練習だ。操力と集中力を途切れさせずに、気で小石を持ち上げるのを想像して」
「わ、わかった」
目の大きな石の上に置かれた小石をじっとみて、指をさす。
【気】で小石を持ち上げるってことは、やっぱり一旦【気】を取り込んで指から流すイメージなのかな。指からビームが出てる感じで行くか。
あの光の粒が指先に集まるのを想像しつつ、俺は目の前の小石をじっと見つめる。そして、集まった気を小石の下に滑らせて、ゆっくりと持ち上げ……。
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