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「おっと、出来た! うわっ、ちょ、むずいっ落ちそう!」
「持ち上げるんじゃなくて、包もうと思って安定させてごらん」
「あーそっか、包んで上げるって感じね!」
婆ちゃんがやってたようにあんを皮で軽く包む。これだ。
小石を気で包んで浮かべる。まだちょっと覚束ないが、それだけで小石はだいぶ安定した。やっぱイメージって大事だな。
暫くそれを続けていると、俺は自在に小石を動かせるようになった。と言っても指をさしてなきゃ駄目だし、一個が限度だけどね。
「無言で持ち上げるのって大変だろう? ……だから、発声して術を発動するっていうのは、とても大事なんだよ。声を出さずに意識だけで動かそうとすると、意識を解放させる行動がない分、多大な精神力が居るんだ。どんな上級曜術師だって、無言じゃナイフ一本浮かせるのが精いっぱいさ」
「えっ、じゃあ俺の無言修行は無駄って事?」
「そうでもないよ。こんなに早く石を動かせるようになるなんて、そう出来る事じゃない。これならきっとすぐに他の曜術も覚えられる。……さあ、小石を動かすのはやめて、今度はグロウで葉を鋭利にする練習をしよう」
なるほど、分かったぞ。
ブラックは俺に一個ずつ術を教えて感覚を慣らしてから、葉っぱカッターを教えるつもりなんだ。確かにそうすると完成形を掴みやすいし、他の術も慌てずにちゃんと使えるようになる。
でも、グロウで葉っぱを成長させるイメージはなかなか大変だった。
なんせ想像する葉っぱカッターは、三日月状の鋭いなにかだ。実際作ってみるとなると中々難しい。結局、刃の様に真っ直ぐな形にするのが精一杯だった。
このあたりはただ単に俺の曜術が未熟なせいだろう。
でもちゃんと鋭い葉っぱは作れたもんな! 一歩前進!
「よし、これをもっと早く作り上げて、風の術で飛ばすんだ。そうすれば【メッサー・ブラット】の完成だよ」
「まさかフロートとグロウも叫ばなきゃだめなの」
「あはは、そんな事したら頭がこんがらがっちゃうよ。そうならない為に、別の名前が作られたんだからね。この術の名前一つで、フロートとグロウを行えるように想像するんだ」
「うええ……むずい……それって複合曜術って言わない?」
「気の力で使う術は曜術じゃないからねえ。これでも、ただの曜術だよ」
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