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「地図、アレで良かった?」
「う、うん。正確なのが欲しかったし……てか……あんた、大丈夫?」
恐る恐る訊くと、ブラックは一瞬目を丸くしたが……もう深刻そうな顔はせず、いつもの人懐っこい笑みでにっこりと笑った。
「ああ、大丈夫だよ。ごめんね、変な所みせて」
「それは……別に、いいけど……」
「アナンってのは、昔パーティーを組んでた奴の一人でね。……アナン・レウコン・ダバーブって言って、凄く強い金の曜術師だった」
「え……」
喋って、いいの?
思わず面食らった俺に、ブラックは嬉しそうに顔を歪める。
「冒険してても絵を描く事をやめない変わり者でね、あちこち飛び回っては地形を模写してた。若い頃の僕にも、結構よくしてくれたよ。まあ……友人くらいには思ってたかな。でも、まさか死んでるとは思わなかった」
「……なんでそれを、俺に話すんだ?」
アンタ、過去とか話したくないって言ってたじゃん。
胡乱な目つきでブラックの無精髭生えまくりな顔を見上げると、相手は何故だかまた嬉しそうにニコニコと笑った。
「ん? 僕の過去の恋人じゃないかって不安そうだったから」
「だぁーッ!! んなことこれっぽっちも思ってないわい!」
「またまたそんな~」
「穴レンコンだか何だか知らんけど、俺はちゃんとした地図買いたかっただけだから! お前の恋愛遍歴とか全然興味ないから!! そういう浮かれポンチな勘違いホントやめてくれないかな!?」
「また饒舌になってるね」
「うっ!! う、うぅう……」
悔しい、違うと言ってるのに解って貰えないこの悔しさ。
今日はセクハラされて無いから殴れないし、ジョーゼツだか何だか知らないけど、すぐにこう言い返されるから下手に反論も出来ない。
本当こいつどんどんタチ悪くなってるぞ。どうすりゃいいの。
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