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「あはは、ほら、機嫌直して。……まあ、でも……ちょっとびっくりちゃったな。僕は五年くらい隠遁生活してたから、その間の世界なんて知らなかったし……」
「……後悔とか、してるのか?」
「ううん。前にも言ったと思うけど、僕はもう過去なんて忘れたいから。それは、アナンの事でも一緒だ。今は君さえいればそれでいい」
「ばっ、ばっきゃろ」
またそうやって、茶化す。
思わずロクに噛みついて貰おうと思ったけど――――ブラックの顔が、なんだか寂しがってる子供のように見えて、俺は意気を失ってしまった。
「肩、抱いてもいい?」
甘えるように上から問いかけてくるブラックに、俺は口を曲げた。
「ヤダ。こんな人前でとか断固拒否する」
「じゃあ、人前じゃない所で。ね」
またそうやって人の言葉を良いように解釈する。
本当訳解んない。今寂しそうにしてたと思ったら、こんなこと言い出すし。
結局過去の事なんて忘れられてないくせに、俺にはあんな鳥肌立つような口説き文句言うって、どういう心境の変化だよ。高低差激し過ぎだろ。
それとも、明るく振る舞ってるのは強がりなのか?
「アンタ、本当……ワケわかんないんですけど」
「うん。ごめんね、ツカサ君」
謝りながらどうしてニヤニヤするかな。
マジで意味不明なんですけど。
何だかもう喧嘩するのも疲れちゃって、俺は深い溜息を吐くと肩を落とした。
「で、なんだっけ……これからどうするんだっけ」
「乗合馬車は国境近くにある街【バラッカ】で終点だから、とりあえずそこまで行こう。バラッカに着いたら、次の移動手段を探して首都に向かうんだ。世界協定の支部があるのは、首都だからね」
あ、そうだ。俺達これから首都に行くんだ。
確か地図上では、ハーモニックの首都【ラッタディア】は南端の海の側にある。そこまで行けば、俺はやっと自分を殺そうとした人と会えるんだ。
そして……噂の、獣ちゃん達とも!!
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