3.蜂蜜瓜とスケベ心

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  「意外だな……下部が美味しいんだね、これ……」 「俺も知らなかった。図鑑には載って無かったし……なんか、結構書かれてない事って多いよな。今までこんな美味しいモン見逃してたとか、本当勿体ないよ」 「うーん、まあ、世界中歩き回っても書ききれない事ってあるだろうしね。誰だって全部を知ってる訳じゃないから。しかし……それにしても美味しいなあこれ……ほどよい水気だし、なにより甘い」 「蜂蜜漬けにしたらもっと美味そう。ちょっと取っておくか」  水気を出来るだけ飛ばして、いくつかの蜂蜜の瓶にぎゅっと詰め込む。  蜂蜜に漬けておけば保存食にもなるし、なによりめちゃくちゃ美味いデザートが出来た。旅で辛くなったら食べよう。  あとの可食部分は、折角なので宿屋の親父さんにあげる事にした。  親父さんはいい花畑を教えてくれたしな。  そしたらとても喜んでくれて、今日の宿代はなんとチャラになってしまった。  村暮らしだと甘い物にありつけるのは稀で、甘味は極上の娯楽なんだとか。勿論ムルカちゃんも喜んでくれて、他の宿泊客にも大いに好評だったようだ。  しかーし、俺はそんな事の為にこの蜂蜜瓜を狩ったんじゃない。  部屋に戻った俺は、薬の調合セット(ザドで買った。結構高かった)を取り出すと、宿への帰り道に摘んできた野草と蜂蜜を一瓶取り出した。 「なにするんだい?」 「へへー、ちょっとな」  流行り物好きな俺の母さんが一時期使っていた、蜂蜜を使ったある物。  今からそれを再現するのだ。  あの時は、知らぬうちに蜂蜜にすり替えられていたシャンプーを思いっきり振りかけてしまって絶叫したり、部屋の中に一週間ほど蜂蜜の匂いが充満したりで本当に地獄だったが、おかげでコレの作り方を覚えていたので今は何も言うまい。  俺はロエルと蜂蜜、そして消毒した瓶を取り出した。  作り方はいたって簡単だ。下部のゼリー状の所をすり潰してペーストっぽくなったら、そこに少量の蜂蜜を足し、真心こめて丁寧に練り上げるだけ。 「ツカサ君、それなんなの?」 「母さんが使ってたトリー……ええっと、髪の艶出し剤、かな」 「艶出し。君の世界にはそんなもんがあるの」 「作り方も違うし、これは俺の自己流で作った試作品だけどな。ちょっと自分で試してみて、駄目だったら作り変えるさ。上手くいけば結構な金になると思うぜ」  
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