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そう、俺が作っていたのは、女子に優しいお薬。
髪がパサついて本来の艶の出なくなった子に贈る、とっておきの逸品だ。
蜂蜜があるんだから、この世界には既に蜂蜜で髪をケアする文化が有るのかもしれないが、村の人だとそんな習慣はないだろう。これは絶好の商売チャンスだ。
旅をする間に各地の人にこれを売り歩いたら、絶対にウケる。元値はゼロに近いもんだし、それなりの価格で売れば、安定した収入になるのではと思ったのだ。
名付けて、富山のトリートメント売り作戦。ドヤ。
「それ……本当にお金の為に作ったの……?」
……うん、いや、お金になるかなって思ったのはほんとだよ。
違うよ。決してムルカちゃんの為だけじゃないよ。あっ、背中からのオッサンの視線が痛い。めっちゃ背中冷たい。ヤバい予感がするぞこれは。
こ、こうなったら、いったん退散する!
「ツカサくん! こらっ、逃げるなっ!!」
「逃げないとアンタ絶対変な事するだろ! やだっ、絶対やだ!!」
完成した艶出し剤とロクを胸に抱いて、素早く部屋を飛び出す。
ひー、暫くは部屋に戻んない方がよさそう。多分捕まったら最後だ、明日は外に出られなくなる。間違いない。……しかし、どこに行こうかな。
「あいつ……普段は全然人の気持ちなんて考えないくせに、何で俺がスケベ心を出した時だけ敏感に感じ取るんだろうなあ……」
「ゥギュー」
忌々しいとでも言いたげに顔を顰めるロク。眉間(らしき場所)にしわが寄ってるのを指で伸ばしてやりつつ、俺は溜息を吐いた。
とりあえず、この薬を試すためにお湯貰いに行くかあ。
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