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とかなんとか真剣に悩んでいたら、ムルカちゃんが笑顔で俺に駆け寄って来た。
あっ、やめて。そんな汚れ無き笑顔で俺に走ってこないで。今凄く死にたい。
「ムルカ、どうせだからお前が洗ってやったらどうだ」
「あたし牛しか洗った事ないけど」
「なに、牛も男も一緒だ。俺が使ってるたわしで頭こすってやりゃいい」
「お気持ちだけで結構ですう」
なにそれ、たわしで頭を擦るって。新手の拷問かな。
まさか娘さんに邪な思いを抱いているのがバレたのか。まさか、まさかな。
内心で冷や汗をダラダラ流しつつ丁重にお断りして、俺は洗い場へと向かった。
洗い場は風呂場ではない。服を洗うから、洗い場と呼ばれている。
冒険者達は汚れた服をそこで洗ったり、時には宿に頼んで洗って貰う。
水はけが良いように作られているので、湯を流すのにもってこいなのだ。
「ふー……誰もいないな。ロク、ちょっとここに座っててな」
「キュゥ」
洗い場の棚にロクを降ろし、俺は上の服だけを脱ぐ。頭を洗うだけなんだけど、このままだとお湯がどうしても服にかかっちまうからな。
大きな水差しに入れられたお湯を盥に入れて、まずは髪を濡らす。
えーと……トリートメントってどうやるんだっけ。
普段全然やらないから殆ど覚えてねーわ。
確か髪を濡らすんだっけか。そんで、艶出し剤を髪に揉みこんでみる。ロエルと蜂蜜だけで練ったので、ジェルに近い感触だな。
「確か……ちょっと時間を置くんだよな」
数分待って、髪を洗い流してみる。これで何か不具合が起こったら作り直しだ。自分の頭で実験ってのは中々怖いが、他人に頼んで迷惑をかけるのは嫌だし仕方がない。洗い残しが無いように濯いで、乾かしてみた。
本当はそのまま洗髪した方がいいんだろうけど、シャンプーはおろか石鹸もないからな、普通の宿じゃ。洗うだけで効果がでなきゃ始まんない。
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