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「あのー。おやじさん、すんません」
「オッ、おお、すまんな寝てたよ。どうした坊主」
「ちょっと頼みがあるんですけど……最悪物置とか納屋でも良いんで、俺の寝る所を作ってくれませんか」
「なんだい、彼氏と喧嘩でもしたか」
「ちーがーいーまーすー。アイツが勝手に怒るだけで彼氏じゃないんですってば。んで、今もなんか知らんが怒ってて……だから、寝る場所用意してくれません?」
そう言うと、親父さんは片眉を上げる。なんだ、俺変なこと言ったか。
「坊主、そりゃ得策たぁ言えねぇな」
「えっ、何でですか?」
「ああいうタイプは怒りがずーっと尾を引くぞ。早いうちに謝っとかなきゃ長々と文句を言われるハメになる。悪いこた言わねぇから、さっさと謝りな」
親父さんの言葉に、俺はひくりと口を引き攣らせた。
尾を引く……確かにありえる。
例え怒りが収まろうとも、あいつは自分に利益が有りそうな事は絶対忘れない。
なんたって、俺が誤魔化そうとしている【ロクを見つけたお礼】を未だに覚えてて強請って来るんだもんな。
この上今回の事までネチネチ言われたんじゃたまったもんじゃない。
でも、今謝りに行ったらなんか凄く酷い事されそうだし……。
「……こういう事訊くのってどうかとは思うんですが……あの……どうにかして、あのオッサンを気持ちよくさせて宥める方法ありません?」
同じ中年仲間なら、なにか良い知恵がないでしょうか。
もうガンガン掘られるのはカンベンですと涙目で聞いてみたら、親父さんは暫し俺をじっと見つめていたが、やがて空を見て頬を掻きはじめた。
なんだ、やっぱ駄目なのか。
「うーん……坊主とあのお連れさんなら……坊主の方からちょいと口付けでもしてやりゃあ、すぐに機嫌が直るんじゃないのか?」
「ええ……親父さん、それされて嬉しい?」
「まあ、お前さんにやられるなら嫌な気分じゃねえな。あのお連れさんならもっと喜ぶんじゃねーのか。スケベそうな顔してたしよ」
ごもっともでござい。
アイツは確かにスケベでございます。
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