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「と、ともかく、村でも油断は禁物って訳だな。わかった」
「そうそう。だからね、夜は一緒のベッドで寝ようねツカサ君」
「お前のような色欲魔神と同衾するぐらいなら納屋の藁の上で寝る」
「色欲魔神だなんて……照れちゃうな~」
「褒めてない!!」
どこを取って褒められたと思ってるんだこいつは!!
寝袋で体がバキバキになるのも嫌だけど、コイツと同じ部屋で寝るのも嫌だな。大自然の中なら逃げ回れるけど、部屋となるとどうなるか解らん。
なんせ俺とブラックの体格差はかなりある。百七十にギリ届かない成長途中の俺と百八十はあるだろうコイツでは、勝負なんてするだけ無駄だろう。
温泉郷の時は色々あって免れてたけど、今回は何もないからな……しかもこのオッサン、浮かれている。二人旅に確実に浮かれている。何をするかわからん。
…………睡眠薬とかしびれ薬とか作ってみようかな。
携帯百科事典には曜術を使わない調合辞典も入ってるし、俺の身の安全の為に探してみよう。ブラックに気付かれないように、こっそりと。
「どしたのツカサ君」
「な、なんでもない! さーロク急ごうなー!」
「キュー!」
道の先に村が見えるのはいつだろうなあ。
出来ればモンスターが出る前に着きたいなと思いつつ、俺は早足で道を進んだ。
時間を知らせる鐘がない外の世界では、今が何時なのかは解らない。
空の色が変わるのを見て大体の時間を予測するだけで、自分がどのくらい歩いたのかも道標が無ければ把握できなかった。
徒歩の旅って結構辛い。しかもこの世界って道沿いには何の店もないし、地面もコンクリートなんかで舗装されてないから足にはかなりの負担が掛かる。
歩くのは嫌いじゃないし、思う存分でっかい自然を堪能してたから嫌ではないんだけどさ、なんていうか……運動能力ゼロの俺にはマジできつい。
暮れかけた空の下、前方左にうっすらと見えた民家の塊を発見してなけりゃ、俺はもう行き倒れているところだった。
ううう、俺ってなんて体力ないんだ。隣でブラックが涼しい顔をしてビシッと立ってやがるのがまた憎らしい。くそう、俺の若い力はどこいった。
「ほらほらツカサ君、もうすぐだよ。さ、もうちょっと頑張ろう」
「うぐぅう……足がめっちゃガクガクする……」
「おんぶしてあげようか?」
「嫌です歩きます」
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