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何でこの年で大人におんぶして貰わなきゃいけねーんだ。
羞恥プレイされるくらいなら歩く、歩きます。ちくしょー宿に入ったら思う存分ゴロゴロしてやる。もう半ば気合だけで足を引き摺って、俺はなんとか村の前まで歩き切った。ああ、もうだめ。本当だめ。
村を囲む柵に凭れ、ぜえはあ言いながら俺はヒュカ村を見渡す。
「な……ハァ、ハァ……なんか……こじんまり、っ、してるな……っ」
「ここは小さい規模の村だからね。でも、宿屋は確か大きかったはずだよ。さあ、もうちょっとだ」
よろよろと立ち上がって、村に入る。
木造の簡素な家々はまさしくヨーロッパの農村って感じだけど、そこまで貧しげな感じはしない。木の家っていっても、和風と洋風じゃえらい違いだ。
少し息が整って来たので、宿に行く途中きょろきょろと見渡してみる。家の裏には畑らしきものがあるようで、盛り上がった土なんかがちらっと見えた。
そういや今まで畑とか見かけた事なかったな。何を作ってるんだろう。
にしても、人気のない村だ。さっきから人っ子一人見かけない。
……田舎って日本でも異世界でも閑散としてるのは変わんないのかな?
そんな変な事を考えつつ村の中程あたりまでくると、他の家よりも大きな建物が見えた。どうやらここが今日泊まる宿らしい。
【綿兎の宿】と書かれた看板は年季が入っていて、西洋風なのに格式が感じられる。これぞ旅人の宿って感じでなんかワクワクするな。
中に入ると、ゲームよろしく真正面にカウンターが有った。
そこにはやっぱりちょび髭の小太りなおじさんが座っている。
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