1.初めて歩く旅の道

4/6
前へ
/136ページ
次へ
   何でこの年で大人におんぶして貰わなきゃいけねーんだ。  羞恥プレイされるくらいなら歩く、歩きます。ちくしょー宿に入ったら思う存分ゴロゴロしてやる。もう半ば気合だけで足を引き摺って、俺はなんとか村の前まで歩き切った。ああ、もうだめ。本当だめ。  村を囲む柵に(もた)れ、ぜえはあ言いながら俺はヒュカ村を見渡す。 「な……ハァ、ハァ……なんか……こじんまり、っ、してるな……っ」 「ここは小さい規模の村だからね。でも、宿屋は確か大きかったはずだよ。さあ、もうちょっとだ」  よろよろと立ち上がって、村に入る。  木造の簡素な家々はまさしくヨーロッパの農村って感じだけど、そこまで貧しげな感じはしない。木の家っていっても、和風と洋風じゃえらい違いだ。  少し息が整って来たので、宿に行く途中きょろきょろと見渡してみる。家の裏には畑らしきものがあるようで、盛り上がった土なんかがちらっと見えた。  そういや今まで畑とか見かけた事なかったな。何を作ってるんだろう。  にしても、人気のない村だ。さっきから人っ子一人見かけない。  ……田舎って日本でも異世界でも閑散としてるのは変わんないのかな?  そんな変な事を考えつつ村の中程あたりまでくると、他の家よりも大きな建物が見えた。どうやらここが今日泊まる宿らしい。  【綿兎の宿】と書かれた看板は年季が入っていて、西洋風なのに格式が感じられる。これぞ旅人の宿って感じでなんかワクワクするな。  中に入ると、ゲームよろしく真正面にカウンターが有った。  そこにはやっぱりちょび髭の小太りなおじさんが座っている。  
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

137人が本棚に入れています
本棚に追加