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「いらっしゃい」
「部屋空いてますか。二人部屋がいいんですが」
「ああ、丁度空いてるよ。夕食はこれからだが……付けとくかい? いらないんなら、代金から引いておくが」
「いえ、頂きます。で、料金は」
「ええと、二人部屋二食付きで……お一人様一泊180ケルブですな」
えーと……銀貨一枚と銅貨八十枚か。そんなに銅貨持てるか畜生。いくら銅貨が十円玉より薄くて平べったくても流石に重いわ。
要するに、銀貨二枚ね。奢られるのも癪なので、ブラックにはきっちり俺の分の代金を渡した。……まあ、俺の所持金の六割くらいは女将さんがブラックから巻き上げた金で支払われたお給金なので、実質払って貰ってるのに変わりはないんだが……。
ふ、深くは考えない事にしよう。
「食事は食堂にてお願いしますね。湯が必要でしたら後からお運びしますんで……おおい、ムルカ!」
「はーい!」
廊下の奥から白いエプロンをつけた三つ編みの女の子がやってくる。
赤毛でそばかす、だけどくりっとした目が可愛いくて穢れを知らなさそう。
こ、これは。この属性は……昔のアニメに出て来そうなカントリーガールだ!!
やばい超可愛い。超お友達になりたい。
「長旅お疲れ様です! お荷物お持ちします……って、あらー」
こっちにやって来るなり、ムルカちゃんは俺達を見て赤くなってしまった。
可愛い……これがゲームの世界だったら間違いなく落としてるのに悔しい。でも宿屋の娘さんって可愛いのに攻略不可な場合が多いんだよな。あー積んでるゲームが恋しい。この世界に来る前にクリアしておけばよかった……。
などと俺が思っていると、ムルカちゃんはとんでもない事を言いだす。
「格好いいおじさまと可愛らしい奥方様でとてもお似合いですぅ……」
「はい?」
「え? 新婚旅行でこの国に来られたのではないのですか?」
「アーッ違いますー!!」
「はれ? 違うんですか! し、失礼しましたぁ!」
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