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「んーと……確か…………ヒュカ村の近くには……花畑があったような……」
そう言いつつ中年はベッドに沈む。俺より疲れてないってのに、もう寝息を立て始めてしまった。なんだろ、冒険者って早寝早起きが身についてるのかな。じゃあ俺も寝た方がいいか。明日も歩くんだもんな。
図鑑を閉じて、ベッドに潜り込む。
水琅石の明かりを消すと、俺は枕の横でとぐろを巻いているロクを見つめた。
「おやすみ、ロク」
「ゥ……キュ……キュゥ」
眠っていても俺の声には反応するらしい。離れ離れになったりしたけど、本当俺の事好きでいてくれてるんだなあ。
優しく頭を撫でて、俺も目を閉じた。
良い夢見れますように。
翌日、筋肉痛の俺は体を引き摺りつつ、ヒュカ村の近くの花畑へと向かった。
ヒュカ村の近くには川が流れていて、その川を取り囲むように野草が綺麗な花を咲かせているらしい。宿屋の親父さんの話によると、その辺りにならハニーターネペントが居るかもしれないとの事だった。
「ハニーターネペント狙いって事は、蜂蜜が欲しいのかい? 確かに売ればそこそこの収入になるけど……もしハニビーとかが沢山居たら危険だよ」
俺の横でごちゃごちゃ言いながら、ブラックは寝癖が付きまくった頭を掻く。俺より早く寝たのに、どうして俺より起きるのが遅いんだろうか。そのくせ筋肉痛とか全然なってないんだから本当ムカツク。経験か、やっぱり経験の差なのか。
くそー俺もこの旅で足腰強くなってやる。
いや、違う。そうじゃなかったな。今はモンスターの話だ。
確かに今の俺じゃあ、素早く動き回る蜂の相手は無理だろうけど。
「ちょっと見てムリだと思ったら引き返すよ、無茶はしないって。……まあ、ダメだったら川で水の曜術の練習しようと思ってたし」
「そう言えば曜術自体は全然練習してなかったね。……うん、そうか。良い機会かもしれない。少し練習しようか」
とりあえず当面の目標はプレイン共和国で【永遠の氷河の保冷缶】を入手する事なんだけど、別にすぐ手に入れたいって訳じゃない。なにより、本当の目的は俺が災厄の力を制御できるようになる事だ。何処かへ行くってのは旅の指針に過ぎないのである。
だから、術を練習できる暇が有るのならそっちに時間を費やした方がいい。
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