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彼と私は元々同じゼミだった。
だけど無口な彼は誰とも関わらなかった。
もちろん私とも。
だけどある日私は消しゴムを忘れた。
「やば…消しゴム忘れた!どうしよう誰か…。」
私は辺りをキョロキョロ見回した。
とはいえ、私の取っている学部は人がそんなにいない。
席は常にガラガラ。
しかも、偶然にも私が座った席は今日左端に谷君がいて右端には誰もいない。
(…最悪!)
そんな時、谷君と目が合った。
(…谷君!)
そして彼がそっと私の机に消しゴムを置いてくれた。
「あ、ありがとう!」
「…ん。」
たった一瞬だけど彼は返事をした後また、下を向いた。
そしてゼミが終わった後、
私は谷君に声を掛けた。
「た、谷君!」
「…何?」
「あの、さっきは消しゴムありがとう。」
「ああ、もう別にいらないから。」
「え?」
「あげる。いらないなら捨てといて。」
「ありがとう。」
「…ん。」
そして彼は去っていた。
それだけだったけど、私は彼の一面を知っていつしか頭の中で彼が気になる存在になっていた。
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