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時が経ち、俺は白石が、白石の母方の祖母の家に居ることを知った。知ったけれど、その場所は知らず、そしてあんな事をした張本人が、ご両親に居場所を聞くことなど出来ず…。
俺は相変わらず、亜矢香の言いなりで、中学も高校も同じ所に通い、そして大学も一緒にという流れになった。
大学に入り、学園祭が近づいた頃、亜矢香が
「ミスターK大コンテストに出なさい。佑磨なら優勝間違いなしよ。ミスターK大が彼氏だなんて、私も鼻が高いし」
そんな事を言い出して、俺は乗り気じゃなかったけど、やはり断れず、出ることになった。そんな時だろうか、校内で時折、白石のような瓶底メガネの女性を見かけるようになった。
まさか、ね。
こんなに近くに彼女がいるはずないよな。
その時はそう思っていたけれど…。
コンテスト当日
俺は亜矢香の陰の力もあって優勝した。優勝した俺に亜矢香は
「ミスK大の彼女に、かなり気障なセリフで褒めたたえなさい」
そう耳打ちしてきた。
俺はそういうキャラでもないので、でも断れなくて、渋々気障な軽い言葉を彼女にかけた。
すると彼女は思いもよらない行動に出た。
場内の照明が落とされて、ステージ後方にありえない映像が流れ出した。
彼女は白石 恵、いや、吉崎 恵は言った。
これは『お返し』だと。自分が綺麗になるきっかけをくれてありがとうと。その『お返し』に、心を入れ替えるきっかけをあげると。
そうしてまた、彼女は姿を消した。
俺は俺の居場所を失った。
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