桐林 佑磨

4/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
時が経ち、俺は白石が、白石の母方の祖母の家に居ることを知った。知ったけれど、その場所は知らず、そしてあんな事をした張本人が、ご両親に居場所を聞くことなど出来ず…。 俺は相変わらず、亜矢香の言いなりで、中学も高校も同じ所に通い、そして大学も一緒にという流れになった。 大学に入り、学園祭が近づいた頃、亜矢香が 「ミスターK大コンテストに出なさい。佑磨なら優勝間違いなしよ。ミスターK大が彼氏だなんて、私も鼻が高いし」 そんな事を言い出して、俺は乗り気じゃなかったけど、やはり断れず、出ることになった。そんな時だろうか、校内で時折、白石のような瓶底メガネの女性を見かけるようになった。 まさか、ね。 こんなに近くに彼女がいるはずないよな。 その時はそう思っていたけれど…。 コンテスト当日 俺は亜矢香の陰の力もあって優勝した。優勝した俺に亜矢香は 「ミスK大の彼女に、かなり気障なセリフで褒めたたえなさい」 そう耳打ちしてきた。 俺はそういうキャラでもないので、でも断れなくて、渋々気障な軽い言葉を彼女にかけた。 すると彼女は思いもよらない行動に出た。 場内の照明が落とされて、ステージ後方にありえない映像が流れ出した。 彼女は白石 恵、いや、吉崎 恵は言った。 これは『お返し』だと。自分が綺麗になるきっかけをくれてありがとうと。その『お返し』に、心を入れ替えるきっかけをあげると。 そうしてまた、彼女は姿を消した。 俺は俺の居場所を失った。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!