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時が経ち、私はK大を辞めて他の大学に入り直し、心理学を学び始めていた。大学の帰りにいつもの道を、ぼんやりと歩いていると、目の前にあるはずのない、おばあちゃんの家が現れた。
「うそ……」
私はその家の中に飛び込んで、おばあちゃんを探した。
おばあちゃんはいつもの居間にいて
「恵ちゃん、『お返し』の相手はまだいるわよ。人の痛みを知るきっかけをおあげなさい」
「おばあちゃん!それはどういうこと?もう私の『お返し』は終わったのよ?!」
私はそう叫んだけど、おばあちゃんの姿は徐々に薄くなって
「白石っ!」
そんな1人の男性の声で、現実に引き戻された。声の方へ振り返ると、そこには桐林 佑磨がいた。
「どうしてここに?」
「大学でのあの時以来、ずっと探していた。いや、本当は小学校のあの時からずっと。やっとこの辺りに住んでるって分かって来てみたんだ」
久しぶりに見た佑磨くんは、以前と違って派手さが無くなり、どこか優しさと苦労を纏ったような感じだった。
「なんか…変わった?」
「色々あったから。それも白石がきっかけをくれたからだけど。それより亜矢香とはまだ親友として付き合っているのか?」
「え?それが何か?」
なんでここで亜矢香の話が出てくるのか、私にはさっぱり分からなかった。
「…これを、聞いて欲しい」
渡されたボイスレコーダーを手に取り、スイッチを入れて、その内容を聴き、私は信じられないと、涙を流した。
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