『お返し』

3/3
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
それには私の知らない亜矢香の声が。 「アハハッ、まさか本当に佑磨に復讐なんてすると思わなかった。こんなことして、あいつもうこの大学に居られないわよね?佑磨もさすがにここまで好きな女にされたら、諦めもつくよね?」 「亜矢香ちょっと酷すぎじゃない?さっきの動画も亜矢香が計画して撮って拡散したんでしょ?佑磨と恵がお互いに好きなの知ってて、こんなことやらせたんでしょ」 「いいのよ、私の佑磨を奪おうとした恵が悪いんだし、私のものにならない佑磨も悪いんだから」 入っていたのはそこまでだったけど、全てを知るには十分だった。 「俺も逆らったら、家がどうなるか分からなくて逆らえなかった。でも、俺も両親も、もう亜矢香達に服従するのはやめたんだ。苦労は絶えないけどさ、言いなりになってた時より、全然いい」 佑磨くんは、私に近づいてポケットから取り出したハンカチで、涙を拭ってくれた。 「今更、許してくれなんて言わない。言いなりになって白石を傷つけたことには変わりないから。でも、これから先、白石……め、恵に傍にいて欲しい」 ああ、佑磨くんは私の『お返し』で心を入れ替えたのね。それに未だにおばあちゃんの姓に変えた私を、以前の『白石』と呼ぶのね。本当の私を見てくれているのね…。 そして、私はまた『お返し』をしなければ。 さっき、おばあちゃんが教えてくれた 人の痛みを知るきっかけを、人を疑う事を、信じて疑わない人を疑うきっかけをくれた『お返し』に。 親友だと信じて疑わなかった亜矢香に。 同じように苦しめ、傷つけられた佑磨くんと。 ね?そうでしょう、おばあちゃん。 世の中には『お返し』しなきゃいけない人が多くて、大変で困っちゃうね。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!