吉崎 恵

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私の初めてのバレンタインは小学校3年生の時 それは 忘れようとしても、忘れることの出来ない 最高に最低なバレンタインで…。 クラスで人気のその男子を、私は一生分の勇気を振り絞って、校舎裏に呼び出した。 「好きです、受け取ってください」 かすれる声でそう言って、私は震える手でチョコを差し出した。 その子は、そのチョコを受け取って、 「ありがとう、嬉しいよ…」 言いながらチョコの包みをガサガサと、乱雑に開けて、チョコの入ったその箱を開けた。そして… 「なぁーんて、言うと思った?この地味女」 その言葉ともに、頭上からチョコが降ってきた。私があげたそのチョコが。 「お前みたいな奴から貰ったチョコなんて、辛気臭いのが移るから食べられねーよ」 歪んだ笑顔を浮かべて、その子は最後にチョコが入っていた箱と、丸めた包装紙を投げつけて、その場を去って行った。 そして、私の最悪なバレンタインはそれで終わらず、この時の様子が収められた動画が拡散されたのだった。 私はたった一日で、あっという間に晒し者になった。
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