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ある日の夕暮れ、高校生活も終わりに近づいて来た3月。
私は彼氏の横で何時もの様に甘えて見せた。
「手繋ご?」
彼氏もまた何時もの様にニヤける顔を抑えながら手を差し出した。
私が少し強めにぎゅっと握ると、彼もまたぎゅっと握り返す。
彼が幸せそうにする度に私もつい嬉しさを我慢するのに精一杯だ。
帰りの遊歩道で赤信号を待っていると彼が言った。
「もう15日まであと4日だね。僕らも付き合ってからもう5年になるんだね」彼は、染み染みと私を覗き込んで来た。
「そうだね。まさか私なんかと付き合ってくれるなんて」と、もう何十回も繰り返した会話をまた私は再度繰り返す。
また、付き合うまでの物語を彼と語り始めた。
私たちは元々仲良しという訳では無かった。それどころか、私は彼に虐められて居た。
靴を隠されたり、取り巻きと一緒になって悪口を言ってきたり、語ればキリがない程。これからも、私が無駄にした数年を決して忘れる事は出来ない。
けれど中学2年になった年に、私は彼と面と向かって話す機会があり、どうやらそれがきっかけで彼が私の事を少しずつ好きになっていったらしかった。
彼は、毎日私にメールをくれて、私もそれに返して居た。
そして彼は私に告白してきた。彼はクラスメイトに何を言われても私を選ぶと、守ると私を抱きしめた。
だから私は、付き合った。
彼が私に依存していく様にするのはとても簡単だった。初めての経験を沢山させてあげて、近づく女も綺麗に排除した。私は高校を卒業するまで彼に尽くすと決めた。可愛くなって、彼が喜ぶ理想の彼女になろうと。
そして今日まで無事に、彼は私だけを好きになり、思い通りに、思ったよりも依存してくれた。
今日もまた、何時もの様に彼を送り。
「また明日」と彼にキスをした。
彼は、私の為に大学には行かず働くと私と同じ就職先に面接をしてくれて、4月からの内定も決まって居た。
そして、ついに卒業式を迎える。
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