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卒業式で私は泣いた、ひっそりとこの5年を思い返して、嬉しくて嬉しくて。
卒業式が終わって、私たちは別々の家に帰った。
それから私は飛び出しそうになる心臓を必死に、必死に抑えて彼に電話をかけた。
幸せそうな彼に私は言った。
「今日までありがとう。別れよ」そう言って乱暴に電話を切る。
数秒して、きちんと彼から電話が来た。意味がわからないと。
私はただ別れたいとしか言わなかった。彼は初めは冗談めいた返事をした後で我に返った様に私に縋った。死ぬとまで言って。けれど私は「死ね」とただただ突き放した。
私は、ずっとこの日を待ちわびて居た。彼が告白して来た時に私が思ったのは、苛立ちだった。私の小学生活を奪った男が、掌を返して今度は付き合ってほしい? そんな身勝手で自分勝手で有象無象の生ゴミみたいなこの男が憎く思えた。だから私は復讐してやると誓った。出来るだけ私に依存させて私以外の全ての時間を奪って、彼の一度しかない青春を奪ってやろうと。
その為に私は彼に尽くした。彼の喜ぶ事を言って、彼がしたがる事をして、けれど言いなりにはならず、私が彼の全てになれる様に。
そして密かに出会い系で会った男との裸の写真を彼に今送りつけた。
男は、結局身体の関係に固執する。だから何だかんだ最後はコレが一番傷つくだろうと、何人もの私が痛みを耐えた男達を送りつけた。
彼は、今頃酷く酷く傷ついている。
ざまを見ろ、と私の枯れた声が虚空に消えた。
私の語りきれない5年間を、復讐に捧げた5年間を叫んでやりたかった。やりきったと、耐えて耐えてやりきったと。
これが私がお前への最高のお返しだ。と満足気に枕に顔を埋めた。
けれど、一つだけ、上手く出来ない事もあった。
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