虐め

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ひと通りの興奮が冷めきった頃、私はハッとした。 身に覚えの無い涙が、しとしとと、溢れて居た。 どうしてなのだろう。心の鉛が、まだ、私の中に残って居た。 5年もの歳月をかけて成し遂げた復讐に、心が晴れて居なかった。 他の男と寝る度に、彼が幸せそうにする度に今日この日を思い頑張って来た。上手く依存させて、見事に傷つけた。 なのに、スッキリしない。目標を達成する事で、こんな気持ちになるなんて。 不思議と、5年もの年月が空っぽに思えた。 そこで私は、たった一つの気の緩みに気づいてしまった。 5年間、彼を側で見すぎて、近すぎて今になって思ってしまった。もしかして、私は彼を本当は好きになっててしまって居たのかもしれないと。 そうじゃない、そんな訳ないと喉を枯らしてみたけれど。ならばどうして、小煩いラインの音を聞く度に胸が張り裂けそうなのだろう。 彼から貰ったショッピングモールの安物のホワイトデーの品物を捨てないのだろう。 ほんのすこしだけ、1ミリだけ、今、「嘘だよ」と言ってみたらと考えてしまうのだろう。 思いもしなかった涙がどんどん溢れて来た。 彼の青春を潰せて、彼はきっと同じ職場も辞退して路頭に迷い、行けたはずの大学へも行けず、私はやり遂げたのに。 涙が止まらない。 ちっとも、嬉しいと思えない。なのに小学生の頃の私だけが、カラカラの声で嬉しそうに笑っていた。 これは、私からの仕返しのはずなのに。 思い出の彼が、幸せそうに笑っている。また手を繋いで歩いてみたいと思わせてくる。 たった一言嘘と言えばまだやり直せる。 (ダメ)と、小さな私が心をえぐろうとする。私の5年は、誰の為の? これは、私の仕返しの物語なのに。 思い出の彼が、私に最愛のお返しをしてくる。 結局、私は彼にまた負けている。 もうどうしようもないよ、とただ。 私は泣いた。
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