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「おーい!」  いつものように瓦礫の山の中から、生活に必要なものをあさっていると、遠くから見知らぬおじさんが私に声をかけてきた。  死に絶えたこの街で生きた人間を見るのは久しぶりだ。だが、大人を……特に大人の男を容易に信用してはいけないことを私は散々教えられてきた。  私はその呼び掛けには応えずに、全速力でその場を離れた。そして、しばらく物陰に身を潜めた後、辺りに人気がないことを確認すると、私はひとまず隠れ家に戻ることした。  すると、隠れ家に向かう狭い道の角に、さっきのおじさんが立っていた。 「やあ。」  誰もいないと思ったところから、いきなり声をかけられて、私は飛び上がるほどびっくりした。 「いや、おじさんはべつに怪しい人間じゃないんだ。」  私の帰り道を先回りして待ち伏せしていたのだから、どう考えても充分怪しいだろう。 「そうだ、これをあげよう。」  おじさんはやや慌てた口調でそう言うと、私の警戒心を解くためか無防備のまま、その場にしゃがみ込んだ。そして、肩にかけたカバンの中をごそごそとあさり、中からパンと飲み物を取り出し、私に向かって差し出した。  そういえば今日は朝からほとんど何も口にしていないことに気がついた。見ればおじさんは武器を持っているようには見えない。私は護身用に銃を隠し持っていたから、最悪の場合、これを使えば逃げられるだろう。    私は礼も言わずにパンと飲み物を受け取ると、その場に立ったまま、それを食べ始めた。
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